一般には馴染みのない鯨尺が廃れないというのには、やはり馴染みだけでなく使いやすさがあるのだと思います。鯨尺の物差しは一番小さい目盛りが1分ですが、メートル差しでは1mmです。きものは洋服と違って体にフィットさせて着るものではないので、1mm単位の細かい寸法は必用がなく、1分単位で間に合うのです。少し細かいところは、1目盛りの半分の5厘というのも使いますが、身幅では、1分単位であらわし、5厘を使う事はありません。
物差しの素材に鯨のひげ使っことから鯨尺といわれていますが、鯨尺が物差しの中で最も長い尺だったことから、大きな鯨にちなんで名づけたという説もあります。鯨尺の物差しには一尺差しとニ尺差しがあり、単位は、1分、1寸(10分)、1尺(10寸)、1丈(10尺)で、物差しの目盛りは1分が一目盛になっています。