和裁用具




糸の種類

 着物を仕立てるときに使用する糸は、主に絹手縫い糸、躾(しつけ)糸、とじ糸です。表地や八卦、胴裏を縫うときは生地に合った色の手縫い糸を使い、袖や裾、掛け衿、そして立褄(衿下)には仕事がしやすいように躾をかけるのですが、その時に使うのが躾糸です。手縫い糸よりもかなり細い糸です。「ぞべ」と呼ぶこともあり、ぐし縫い(飾り躾)にも使います。躾糸は絹ミシン糸を代用することもあります。袷の着物の表と裏を綴じるときに使うのが綴じ糸です。私は50番の綿糸を使っていますが、仕立て屋さんによって違うようです。

 糸の素材は着物の素材によって選びます。絹物にはやはり絹糸だし、シルックなど化繊のものには化繊の糸、麻は麻糸?麻糸は売ってないので絹糸で縫います。浴衣は木綿ですから綿の糸を使うのが良いと私は思います。ただ、素材が木綿でも中には高級品もあり、反物によっては絹糸の方が適した場合もあります。つまり、必ず同じ素材の糸を使わなければならないというものでもありません。

色糸の選び方
   白糸に対して色の付いている糸が色糸ですが、当然生地の色に一番近い糸を選びます。実際にハギレなどをお店に持参して選ぶのが間違いが少ないです。どうしても合う色がなく、近い色で選ぶとしたら少し濃い色を選びます。薄いと光ってしまうからです。袷は縫い目が直接見えないので多少の違いは気にならないのですが、単衣物は縫い目もくけ目も直接見えるので慎重に選ぶ必要があります。以前、縫い糸の色が違うので気になるというクレームがお客様から付いたという話を聞いたことがあります。糸選びも大事な仕事と言うわけです。
 
 糸が生地より薄いと光ると書きましたが、これには裏ワザがあって、蝋引きにすると光沢が抑えられ多少色が濃くなり、くけ目が目立たなくなります。蝋引きというのは、手縫い糸をロウに当ててすーっと滑らせるとロウが薄く糸に付きます。その後、糸に「こて」かアイロンを当てるのです。こうすると、糸も捩れなくなり仕事がはかどります。この方法は洋裁材料店の店員さんに最近教えいただいて初めて知りました。

 それから、色糸は色番号が同じなのに色が微妙に違うことがあります。反物を染めるときに、色見本とまったく同じ色に染めるのは難しいのと同じなのだそうです。

衿とじ糸

 
女物の着物で広衿の場合、衿の天(衿の中心)に引き糸かスナップをつけます。この引き糸に私が使っているのが「衿とじ糸」です。糸の太さは穴かがり糸より少し太く和裁用具専門店で購入しています。この糸は160m巻と表示のあるカードで売られていますが、これは多分絹手縫い糸用のカードをそのまま使っているのでしょう。衿とじ糸は太いのでそんなに長くはないはずです。私が習った和裁塾では普通の色糸も小さなカード(40m巻)ではなく、このサイズのカード巻きを使っていました。160m巻きですから、市販のカードの4倍ですね。なお、私は衿とじ糸には2寸8分(7cm弱)の布団とじ針を使っています。

着物に使う糸の長さ

 
 着物を縫うのには針と糸がなくては始まりませんね。さて、一枚の着物を縫うためには一体何メートルの糸がいるのでしょうか。着物の寸法によっても違うし、袷か単衣物かによっても当然違ってきますが、大よそ40メートル前後は必要です。一般に市販されている絹の手縫い糸は小さなカード巻きで40メートルですが、これ一枚で着物一枚は縫えるという長さになっているのだと思います。40メートル、走れば数秒の距離ですが、これだけの長さを手で縫うのですから、和裁ってすごいと思いませんか。

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